昨年、オメガから復刻が発表された cal.321の、今年発表となったSSモデル、「スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール」が日本初入荷したのでレポートします。
忠実に復刻された直径39.70mmケース
クラーレのアンジェリコを分析した際、チェーン・フュゼの弱点として認識していた「巻き上げと放出が同じ端から行われるので巻き上げに特殊な機構が必要」を(遊星)差動歯車を使う事でスマートに解決できることが分かりました。
古典的なフュゼでは逆回転の巻き上げの力が輪列に伝わらないようする2重のラチェット(デテント)と、巻き上げ時にトルクが途切れる問題を解決するための補助動力Maintaining springが用いられますが、ラチェット爪の抵抗がなくなること、内歯車さえ作ることができればよりシンプルな構造になるというメリットはあると考えています。
さて、遊星差動歯車で同じ端から巻き上げるという視点で見るとハイテクワイヤーを使ったクラーレの方法は「現代だからできる」言う方法であるといえます、同様に高弾性ゼンマイが開発された現代だからこそできるコンスタントスプリング(定トルクバネ)を用いた興味深い作品として、永遠の時財団とウルベルクのNaissance d’une Montre 2があります。
以前にも少し触れましたが、改めて解析してみたいと思います。
アップサイドダウンで、輪列は全部見えているので解析は容易…と考えるといきなり引っかかるポイントがあります。
通常の設計であれば香箱は1番車で、それに2番車が噛み合い4番車まで加速、ガンギ車までトルクが伝わります。
しかし、Naissance d’une Montre 2では数えると、歯車が1枚少なくなっています。
これは、香箱同軸に巻き上げ機構を兼ねた遊星差動歯車機構による加速ギアが設けられており、1番車に見えるものは香箱同軸の2番車だからです。
この2番車の回転は1:1の伝え車でセンターの表示用歯車に伝えており、ある意味オフセット輪列ともいえます。